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最高裁判所第一小法廷 平成12年(許)32号 決定 2000年12月21日

抗告人 小林博行

相手方 徳島地方検察庁検事正 代理人 高橋秀典

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人本渡諒一、同伊藤孝江、同木島喜一の抗告理由について

本件文書提出命令の申立てを却下した原審の判断は、是認することができる。論旨は理由がない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

平成一二年一二月二一日

(裁判官 町田顯 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎 裁判官 深澤武久)

抗告代理人本渡諒一、同伊藤孝江、同木島喜一の抗告理由

一 原決定の判断

原決定は、平成一一年(モ)第九二九号文書提出命令申立事件申立書記載の文書(以下「本件各文書」という。)が、民事訴訟法二二〇条三号後段にいう「法律関係文書」に該当すると判断したものの、右文書保管者である本件申立の相手方である徳島地方検察庁検事正の、本件各文書は刑事訴訟法四七条に該当するとしての開示許否には、右許否に際しての裁量権の逸脱が認められないから、本件文書の提出を命じることはできないと判断したものである。

二 原決定の問題点

原決定は、次のとおり抗告裁判所である高等裁判所の判例に反し、また右決定には民訴法二二〇条、刑訴法四七条の解釈に関する重要な事項が含まれているにもかかわらず、その解釈判断を誤ったものである。

三 判例違反

1 判例

前記の裁量権行使の相当性が認められるためには当該文書につき「刑事訴訟法第四七条但書の適用外の文書であるとの判断が、具体的事由に基づく合理的なものと認めるに足りる資料」に基づく必要があり(東高決昭六二・七・一七、判タ六四一号八〇頁、同六四六号九六頁)、さらに非開示の「理由があることについて、相手方が何ら明らかにしない場合には、」非開示の「事由は特に存在しないものと一応推定されるべきであ」るところ、文書の保管者が、「公開できない理由として捜査の秘密を保持する必要性がある」などとの事由を主張するのみでは、右推定は妨げられない(東高決昭六二・六・三〇、判時一二四三号三八頁)とするのが抗告裁判所としての高裁の判例である。

2 原決定の判示

ところが、原決定は、本件文書を公開できない理由として、基本事件との関係で、本件各文書の提出を求めるための、公益上の事由があるとはいえず(原決定書九頁)、また本件のような場合に「一般的に関示がなされるとすれば、国民の捜査機関に対する信頼が損なわれ、将来捜査のための協力が得られなくなる恐れもある」(同)などと判示するのみである。

3 原決定の判例違反

しかし、基本事件との関係で本件各文書の提出を求めるにつき、「公益上の事由があるとはいえない」と言う判断が誤りであるということは次の四に明らかにするとおりである。

したがって、結局原決定は、捜査の抽象的必要性を認定したのみで非開示の相当性を認めたことになる。

しかし、そのような判断は、非開示の相当性を認めるには、結論として、捜査の抽象的必要性等を主張するのみでは不十分であるとする先の三判例に反する。

四 刑訴法四七条、民訴法二二〇条に関する解釈の誤り

原決定は、基本事件を申立人が被疑者となっていた事件の捜査に関し、徳島県、司法警察職員、告訴人及び新聞社に対して損害賠償等を請求するものであって、本件各文書の提出を求めるための公益上の事由があるとはいえないと判断する。

しかし、基本事件は刑事事件に関し司法警察としての警察の捜査が適法に行われなかったということを損害賠償請求の理由とするものであり、警察が適法に捜査を行ったか否かということが、公益に関する事項であるか否かということは、説明の要もないほど明らかなことである。

しかも、新聞社の報道活動は公益に資する表現活動として判例上「民主主義社会において極めて重要な意味をもつ新聞等の表現の自由」(最判昭六二・四・二四等)と認識されているのであるから、その新聞社の報道活動が適法になされたか否かということもまた公益に関することである。

したがって、原決定は、文書提出命令の適用の許否を決定する重要事項である刑訴法四七条の解釈を誤り、ひいては民訴法二二〇条に関する判断を誤った。

五 結論

以上の次第であるから、原決定に対する抗告許可が認められるべきである。

(裁判官 井土正明 裁判官 溝淵勝 裁判官 杉江佳治)

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